福岡県京築保健福祉環境事務所での講演報告

流産や死産、中絶、新生児死など、大切なお子さまとのお別れを経験されたご家族の心に寄り添う活動をしている「花はすお話会」です。

先日、福岡県京築保健福祉環境事務所にて、「小さないのちを見送ったご家族に対してできること~医療・行政・地域がつながるグリーフケア」 をテーマにお話しさせていただきました。

まずは自己紹介や「花はすお話会」を立ち上げたきっかけ、そして「グリーフケアとは何か」についてご紹介しました。

「グリーフケア」という言葉は、まだまだ社会に知られていません。
その意味や必要性、特に流産や死産を経験したママたちにとってなぜ地域に必要なのかをお伝えしました。

それこそ、流産、死産、または新生児死亡など、妊娠中から出生後間もない期間に赤ちゃんを亡くすことによる喪失感や悲しみのことをさす「ペイネイタル・ロス」は専門性が高い言葉で行政ではあまり使われていません。よって、とにかく「グリーフケア」を知っていただきたく、あえて「ペリネイタル・ロス」という言葉は説明しませんでした。

左)福岡県行橋総合庁舎の看板、右)江藤とgrief care 「いのちのまなび」代表南部さん

活動紹介の場面では、私たちがワークショップで制作した作品を回覧し、実際に手に取っていただきました。
花はすグリーフケアカフェは

  • 「話さなくてよい場」(ものづくりやハンドマッサージ)
  • 「体験や日常を話せる場」(食事やお茶を囲むカフェタイム)
    の二つに分けており、安心して過ごせる仕組みをご紹介しました。

また、参加者の声もお伝えしました。
お話会には、流産・死産・人工中絶・新生児死を経験したママたちはもちろん、きょうだいや身内が経験された方、私たちを応援してくださる方、グリーフケアに関心を持つ方々が参加してくださっています。

花はすお話会のワークショップの作品やスタッフのアルバム、エンジェルドレスなど

傷ついた言葉・救われた言葉

さらに「傷ついた言葉・救われた言葉」についても共有しました。
背景を知らない人からの言葉はときに深く傷つけますが、同じ経験を持つ人からの言葉は大きな励ましになります。

例として、私自身が経験したことを紹介しました。

  • 「子どもができたんじゃない?」
     妊娠中に不安障害でつらい時、経験のない友人から言われてとても嫌でした。自分が嫌な気持ちになったこと自体にも嫌気がさしました。
  • 「流産したということは妊娠できるということ。頑張りなさい」
     不妊治療に取り組んできた年上の女医さんと助産師さんからの言葉。励ましとなりましたが、もし別の人から言われたら傷ついたかもしれません。

同じ言葉でも「誰からの言葉か」で意味が変わることをお伝えしました。
だからこそ「ママへの体の気遣い・共感・傾聴」が大切であり、言葉かけに正解はなく、丁寧なヒアリングが必要だと感じています。

また、支援者が見落としがちな点として、流産後に妊娠できた=安心ではない ということをお伝えしました。実際には見えない不安がつきまとい、不安障害へつながることもあります。

参考書籍やパンフレットを紹介

地域の連携

地域の状況についても共有しました。
京築地域には産婦人科が2件と助産院がありますが、周産期母子医療センターはなく、北九州市に頼らざるを得ません。そのため産婦人科や助産師と連携しながら進めています。
また、子ども家庭センターや他の自助グループとの協力も少しずつ進んでおり、今後は葬儀社・保険・企業などとも連携できればと考えています。

支援者としてできること

  • 傾聴と安心の場づくり
  • 不用意な言葉を避ける
  • 経験者の声を活かす
  • 「わからない」を正直に伝える
  • 仲間や地域と連携する
  • 支援者自身のセルフケアを大切に

私たちは、「グリーフケア」という言葉が必要ない社会――誰もが自然に寄り添える優しい社会を目指しています。

最後に、少しだけ背景のお話を。
私は2021年から子育て関係の講座をしていました。そのとき出会ったママ友が後期流産を経験しましたが、当時は流産や死産が産後ケアの対象外で、「死産届を出したあとは、何もなかったことにされた」と嘆いていました。

その後2023年9月には、福岡県のホームページに「流産や死産を経験した方へ」というページが新設され、死産後の産後ケアも対象となりました。さらに2025年には「妊婦のための給付金」の対象が広がり、胎児心拍確認後の流産・死産・人工妊娠中絶も支援対象となりました。

行政も変化に戸惑いながら対応している今、地域でグリーフケアに取り組む私たちの活動が注目されるようになってきました。

これからも一歩ずつ、地域や行政とともに歩んでいきたいと思います。

花はすグリーフケアカフェの次回の日程

【 花はすグリーフケアカフェ苅田
・日時:2025年9月11日(木)10:30~13:30
・場所:つどいの家なないろは
・内容:お話会とカフェタイム
・申込:https://tol-app.jp/s/hanahasu

【花はすグリーフケアカフェ行橋】(行橋市民限定)
・日時:2025年9月18日(木)10:30~14:30
・場所:Powanハウス
・内容:Wave of light キャンドルホルダーとキャンドルづくり&カフェタイム+希望者に個別相談
・申込:https://forms.gle/HrdAicTFBMeNfq1S8

🌸第2回 花はすマルシェ🌸
・日時:2025年10月9日(木)10:00~15:00
・場所:つどいの家なないろは(苅田)
・内容:入場無料
    流産や死産などの経験をしたママやその応援者たちによるマルシェ(販売、ワークショップ、体験など)
    花はすお話会の活動紹介、福岡県の取り組みや他の自助グループの紹介展示、
    グリーフケアやピンク&ブルーリボン活動の周知内容などの展示
    誰でも参加できる地域参加型マルシェ

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